ありえない日本語

ありえない日本語 (ちくま新書)

ありえない日本語 (ちくま新書)

「若者の言葉は乱れている」というのを、私たちはよく耳にします。その根拠として、「文法から外れているから」というのもよく聞きますよね。しかし、もともと文法というのは、実際に使われている言葉に、後から無理やり理屈をこじつけたものです。

言葉の乱れの象徴としてよく例に挙げられる、「食べれる」「着れる」などのら抜き言葉だって、日本人みんなが「ら」を抜いて口にするようになってしまえば、正しい日本語として認識されるかもしれないのです。

ですから、「ありえない」「やばい」「うざい」「きもい」などの、現代の若者を象徴する日本語も、正しい日本語として認識されるかもしれません。

私がこの本を読んで、まず考えたのは、このようなことでした。

この本は、「ありえない」「なにげに」などの現代の若者を象徴する言葉に含まれている背景を、少女マンガのセリフなどをテキストとして探っていこうというものです。

なぜ少女マンガなのか。それは、少女マンガは他の媒体に比べると、圧倒的に若い女性が描いているから。確かに、少女マンガ家は、20代後半になると対象年齢の高いコミック誌に移籍する方が多いですから、若者言葉のテキストとするのは納得です。

そして、現代の若者言葉の背景に共通するのは、コミュニケーションの変質。若者言葉の多くは、自分の意思をオブリガードに包んで表現するためのツールと、筆者は分析しています。

インターネットや携帯電話などで、他人とコミュニケーションをとるのは、どんどん簡単になってきているはずなのに、自分の意思をはっきりと表明しないというのは、なんとも不思議な感じがします。現代の若者は、難しいですなあ。